第10回 数学と音楽
ピタゴラスが、鍛冶(かじ)屋の前を通りかかった時、
いくつかのハンマーが、同時に鉄に打った音に、
きれいに響く音と不快に響く音があることに気づいたそうです。
そのハンマーの重さを量ってみると、
2分の1、3分の2など、
数学的に単純な比になっていることがわかりました。
そして、それを弦にも応用して、
(例えば、張られた弦の2分の1の場所を押さえると、
1オクターブ上の同じ音が鳴ります)
楽器の調律を行ったそうです。
つまり、音楽的に美しいものは、
数学的にも美しい、
と、示したわけなんですね。
けれど、完全5度の音をつなげてできた
12音階には、微妙なズレがありました。
それを、ピタゴラス・コンマということは、
前回、お話ししました。
そのズレもまた、数学的に計算できるのですが、
複雑なので、ここでは触れません。
そして、そのズレがあるために、
いろいろな調律方法が考えられました。
例えば、「純正調」は、
ある和音、例えば、C(ドミソ)を
きれいに響くように合わせる方法なんですが、
それで、半音上の C#(ドミソの全部半音上)を弾くと、
汚い響きになってしまいます。
つまり、調(キー)が変わるたびに、
音を調整しなければならないのです。
ピアノという楽器が発明され、普及していったこともあり、
どの調(キー)でも、平均してきれいに響く、
「平均律」が、一般的になっていったというのが一説です。
「平均律」は、数学的に、
オクターブを均等に12に分けた調律方法で、
これによって、
曲中で、どのキーにも転調できるようになったり、
複雑なテンション・ノートを含んだ
ジャズが発達したりしました。
こんなふうに、音楽には、
数学が少なからず、からんでいたんですね。